武雄市にあるArtist In Residence "ARTS ITOYA"において、2019年4月に滞在制作を行なった成果として、「磁器と磁気」というタイトルで作品を制作しました。 「磁器」とはこの地域の特産品である、陶石を使って作られる磁器です。「磁気」とは、鉄を惹きよせる磁石に特有の性質のことです。お互い関係が薄いように見えるこれらをテーマにしたのは、武雄近隣エリアでの磁器に関する調査を通して得た気づきがきっかけでした。
磁器の生産地として有名な有田の中で、330年の歴史を持つ「香蘭社」という磁器メーカーがあります。香蘭社は、磁器の器の生産で世界中で評価されていますが、実は香蘭社にはもう一つの顔があります。それは、「碍子」の生産です。碍子は、磁器の高い電気絶縁性を利用した工業製品で、電柱など、高い電圧の場所では必ず使われるものです。香蘭社は、150年ほど前、明治政府の依頼により、初めての碍子の国産生産に成功した会社でした。インフラとしての電柱の敷設の需要があったため、碍子の売り上げによって香蘭社は支えられ、器の生産と研究開発に力を入れることができています。現在でも、売り上げの半分以上は碍子の売り上げが占めるほど重要な事業ですが、実は、この地域の人たちでさえ、この地域と碍子に関係があることを知りません。
今回、メインとなる作品は2つです。 大型の作品では、これだけ身近でありながら、存在が意識されない碍子を取り上げました。碍子は、高い電気絶縁性を持つため、数万ボルトの電圧をかけても電流が流れませんが、その一方で、磁気は通すという性質があります。この作品では、碍子に巻きつけられた電線に数アンペア程度の電流を流すことで、碍子を通して磁界を発生させます。
もう一つの作品は、磁器の音に関する作品です。 磁器は陶器に比べ、金属的で澄んだ音がします。このエリアでは、この特徴を活かして風鈴が数多く生産されます。しかし、風鈴は型で作られるため、固有振動数がほぼ同じになり、限られた種類の音の風鈴しか存在しませ。 この作品では、磁器の器を割り、固有振動数の異なる複数の破片に分割した上で、磁気を通す性質を利用し磁器の上で磁石を動かし、その動きによって磁器と擦れたりぶつかることで音を発生させます。発生する音はとても小さいですが、動きに注目し、音にフォーカスし始めると、音は徐々に聴こえるようになります。
残り2つは、磁器と磁気をテーマにした小さなコンポジションです。 1つ目のコンポジションは、窓に貼り付けられた時計と鏡、磁石によって挟まれた磁器から構成されます。鏡はゆっくりと動き空間を映し変えながら磁器と空間の関係性を見せます。
最後の作品は、磁界の発生とは関係が深いコイルと、磁器であるセラミックによって構成されたピエゾを使ったコンポジションです。多軸のケーブルをコイル状につなぎ、ピエゾ(圧電素子)を接続することによって、外力によってわずかな磁気が発生します。
Taishi Kamiya had an exhibition on the 27th-28th April 2019.
“磁器と磁気 | Porcelain – Magnetism”
Porcelain is made using pottery stone, which is a special product of the area. Magnetism is a characteristic of magnets that attracts iron. These two things seemed to be unrelated, however Kamiya figured out that they were deeply connected through a survey here in Takeo.
Porcelain creates a metallic sound, which is clearer than pottery. In this area many wind chimes are produced, Kamiya takes advantage of this feature. However, there are only limited sounds and no variety because wind chimes are made in molds. In this work, the porcelain bowl is divided, the sound is divided, the magnet is moved using the property of passing magnetism, and the movement generates a sound by colliding with the porcelain. The sound that is generated is very small, but when you start focusing on the sound and focusing on the movement, the sound will gradually become audible.
It consists of a watch and a mirror attached to a window, and a porcelain sandwiched by magnets. The mirror shows the relationship between porcelain and space while slowly reflecting the movement space.
In the large-scale work, Kamiya took up Gaishi(insulator). Insulators have high electrical insulation, and even when they are applied tens of thousands of volts, current does not flow, but they have the property of passing magnetism. In this work, a current of about several amperes is applied to the wire wound around the ladder, and a magnetic field is generated through the ladder.
Kamiya also took us for a “Sound work shop” around Takeo Onsen and the Sakura mountain. We found a regional sound different from the one we usually listen to.
神谷 泰史の滞在制作発表”磁器と磁気”を開催致します。
アーティスト名 神谷 泰史 (カミヤ タイシ) / Taishi Kamiya
日時 4月27日(土)、28(日) 
時間 13:30~17:00 入場料無料
協力 株式会社 香蘭社
※28(日)15:00よりアーティストトーク、「武雄の音を聴く」ワークショップを行います。
~アーティスト紹介~
札幌出身、東京在住のサウンドアーティストです。 音の持つ偶有性を保ったまま環境を整理し作品として提示することで、 聴く人に音の解釈の多様性を与え , 意図しない美しさの発見を促すような試みを続けています。 ソプラノサックスと自作デバイスやラップトップを用いた音楽の演奏を行い、 イギリスのレーベル Homenormal や NomadicKidsRepublic より音楽作品をリリースする他、 寺の本堂や蔵、雪の中など、様々な環境下での音楽イベントの企画・運営や、 自然の物理現象にフォーカスしたサウンドインスタレーション作品の発表などを行っています。
~滞在制作発表について~
ARTS ITOYAでの滞在製作中では、「磁器と磁気」と題し、 佐賀県武雄近隣のエリアで生産される「磁器」と、磁石に代表される引力や斥力を及ぼす「磁気」をテーマに作品を制作いたします。一般に、これらの言葉が同時に使われることはあまりないものの、この地域の歴史を語る上で、遠くで繋がっている磁器と磁気の関係性に着目した作品を展開します。
また同時に「武雄の音を聴く」ワークショップを行います。 夕暮れの武雄温泉街を散歩しながら、普段聴く音とは違う地域の音を一緒に探しにいきましょう。
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